立山の思い出 室堂へ

弥陀ヶ原を離れて、標高2450m、立山登山のベース基地、室堂ターミナルに向かいます。弥陀ヶ原から室堂へも見所が多いのですが、小学校などの登山ではけっこう素通りが多いようです。少しでも、立山の魅力を知ってもらうために、車窓での見学をしていきました。
弥陀ヶ原からは、美松坂に沿って高原道路が走ります。天狗山の斜面に一面に広がるのは、オオシラビソ、アオモリトドマツともいいます。高山に生える針葉樹ですが、このあたりが森林限界。この先は、ハイマツだけになります。オオシラビソを美松と呼んだことから、オオシラビソの樹林帯を抜けるルートを美松坂と呼びました。現在は、一ノ谷を使うルートが一般的ですが、立山禅定道のルートの一つです。
美松坂を抜けると、天狗平に出ます。天狗山の大斜面には、春遅くまで残雪が残り、よく全日本級のスキー選手たちが合宿しています。天狗山荘は、100歳を過ぎても現役スキーヤーとして活躍した三浦敬三さんがしばしば利用した山小屋として知られています。
ここから室堂にかけては傾斜の緩やかな火山性の台地が広がっています。弥陀ヶ原と違いここには池塘などはありません。ところどころに大きな岩が転がっていて、明らかにそれまでとは光景が変わります。何よりも、大きな樹木が完全に姿を消し、森林限界を超えた高山地帯に入ったことを教えてくれます。窓の外もすっかり雲の中で、白い風景に包まれています。天狗平の少し前からよく見える御赦免滝も
はっきり見えませんでした。
御赦免滝は、立山曼荼羅で説明される地獄谷から流れ出る滝です。罪を赦されて地獄から出ることができたという意味なんでしょうね。しかし、今では、その形状からソーメン滝と呼ばれることも多くなっていますし、看板はそうなっていました。御赦免滝の向こう側に見える赤い地肌のエンコウ山は、火の山です。地熱の関係なのか、草木が生えず、春先でも真っ先にその山肌を見せます。その様子を地獄の業火に燃える火の山に見立てたのでしょうね。
天狗山というのも、この天狗平では地形の関係で突風が吹き上がることがあり、それが天狗の仕業と言われたことにちなんでいます。地名は、自然の様子をよく物語ってくれます。
天狗平を出てすぐ左手が剱岳をよく見渡せる場所です。ちょうど、ヘリコプターの荷揚げに使われる広場です。この日は、ちょうど2600mくらいに雲の厚い層があって全く見えませんでした。
このあたりから、台地に広がった岩がよく目立つようになります。これらの岩は、氷河が置いていったものだそうです。「迷い石」と呼ばれていたようです。
室堂ターミナルの直前が、大谷。雪の大谷で有名な場所です。まだ、4mくらいの雪が残っていますね。昨年度、水の少年団でこの雪解け水を調査しましたが、ph5.5という酸性が検出されました。その原因はよくわかっていません。なかなか調査の機会がなく、来年、また、調査を行うことにしましています。
大谷の雪はいわば吹きだまりの雪です。山の稜線の向こうには、大きな立山カルデラがあり、そこから吹き上げた風がここに雪を落としていくようです。
さあ、いよいよ立山室堂。ここで、高原道路も終了です。